ベルボン商品開発秘話
こんにちは、ベルボンダイレクトの又平です。先日発売した望遠レンズ用の雲台「FHD-66A」。 皆様にとっては新製品なのですが社内では結構な時間をかけて開発されていました。今回はそんな新製品開発の一幕をご紹介します。
製品開発への道
まず新製品を開発する際には色々な要望が設計部へ集められます、ユーザーの皆様からやプロカメラマンからは機能の要望、もちろん営業部やお店からも売れる価格についてなど。それらの意見のバランスを取りつつ設計部が図面を描いて試作、そして動作の検証などを行いながら細かい所を調整していく、というのが大まかな流れです。
「FHD-66A」の開発では望遠レンズ用雲台(ビデオ雲台)に必須の滑らかな動作感は当然として
・売れ筋のレンズ150-600mmに丁度いい望遠レンズ用の雲台
・雲台でカメラの縦横が切り替えられる事(短いレンズで写真撮影で使えるように)
等がありました。それに加えて「寒冷地でも使用できる事」というのが条件に開発が進められています。
ビデオ雲台にとって、使用温度は非常に重要な要素。一般的にカメラやカメラ用品が使用可能としている0度~40度の範囲では温度変化による動作感の変化を感じる事はありませんが、マイナス以下まで温度が下がってくると内部のグリスの粘性が変わったり部品が収縮することで動作感が変わっていきます。 冬の野鳥撮影では温度がマイナスになるような状況で撮影することも多く、出来るだけ低温度下でも安定した動作感を持続出来るようにする。というのが開発に出された条件でした。
この条件をクリアするためには単純に凍らないグリスを使えば良いと言う訳では無く、一定の重さを出すために内部の構造やグリスの入れ方などに工夫をしています。そうして完成した雲台が「FHD-66A」なのです。
マイナス-40度への挑戦
…で、その工夫が有効なのか確かめる為に試験場にやってきました。(※発売の一年以上前の話です)ここにあるでっかい冷凍庫で雲台をガンガンに冷やして動作を確認します。この冷凍庫、最低温度が-40度まで設定できるようなのでそこまで攻めていきますよ!と言っても計測試験は設計部の人が行うので私はオマケみたいなものなのですが。
-40度なんて入ったこと無いので楽しみ。実際に低温なのか写真では伝わらないですよね、という事でこんなものを作ってきました。
バラは花屋の見切り品。「バラがバラバラ」とか言いたかっただけです。ちなみに-40度でも見た目はほとんど変わりませんでした。大丈夫です、私が遊んでても設計部がちゃんとデータを取っていますので。
試験は何も載せない状態・機材荷重をかけた状態での動作力や固定力を計器や実際に動かしてみたりしながら判定します。それなりに厚着してても-30度位から入っているのが辛い温度になります。↑の写真の人は何故か素手で作業してますが…。
私以外が真面目に試験を行った結果ですが、-20度までは特に動作に影響は無く、-30度から徐々に動作が重く渋くなっていきます。-40度でもまぁ動きますが念のためベルボン公式の使用可能温度は-20度という事になりました。ちなみに土台の三脚プロジオV640も-20度での正常作動を確認しています。
余談ですが寒冷地では撮影後の結露対策など後のケアも重要です、中に結露が出来て次の日の撮影中に凍って動かなくなる…なんてことがないようにしっかりと撮影後の拭き取りや乾燥などのアフターフォローにも気をつけて撮影して下さい。
と、このような努力を経て完成した「FHD-66A」コストパフォーマンスに優れつつも高い完成度を持った雲台になっています。動画や望遠レンズでの撮影をされる方にオススメの製品ですので是非チェックしてみて下さいね!
↓の記事でも、プロの作例とともにこの雲台の機能を紹介して貰っています。この記事よりも参考になるかも…
デジカメウォッチ「ベルボンの新型雲台「FHD-66A」が野鳥撮影で使いやすい!」
あ、忘れてました…
ではまた!